昭和レトロな喫茶店の内装
JOURNEY

昭和の喫茶を巡る旅

プラスチックの椅子、手書きのメニュー、重厚な木製カウンター、そしてネルドリップで淹れた深煎りの香り——令和のいま、昭和の喫茶店が静かなブームを迎えている。なぜ人々は「純喫茶」に惹きつけられるのか。その文化と魅力を、歴史とともにひもといていく。

HISTORY

日本の喫茶文化、その歴史

コーヒーが日本に入ったのは江戸時代末期とされているが、「喫茶店」という文化が花開いたのは大正〜昭和初期のこと。文豪や芸術家たちが集い、思想を交わす場として、喫茶店は社交の場となっていった。

レトロな喫茶店の内装

木の温もりとレトロな小物。昭和の空間は、懐かしさとともに包んでくれる

1888年(明治21年)

東京・上野に「可否茶館」が開業。日本初の本格的な喫茶店とされる。コーヒー・紅茶・ビリヤード台を備えた社交場だった。

1920年代(大正末〜昭和初期)

銀座・新宿などに「カフェ」が相次いで開業。女給(ウェイトレス)が接客する新しいスタイルが登場し、文化人や学生に親しまれた。

1950〜60年代

「純喫茶」という言葉が普及。アルコールを出さない純粋なコーヒー・紅茶の店として差別化。レコードやジャズがBGMの、知的な空間として愛された。

1970年代

喫茶店の全盛期。日本全国に約15万店が存在したとされる。モーニングサービスが定着し、ビジネスマンの朝の定番となった。

1990年代〜

シアトル系コーヒーチェーンの上陸により、喫茶店は激減。2000年代には約7万店まで半減した。しかし生き残った老舗には確固たるファンが。

2010年代〜現在

純喫茶ブーム到来。若い世代が「レトロ」「エモい」として再発見。SNSで話題になり、老舗への新しい客層が生まれている。

CULTURE

純喫茶の「文化」を味わう

純喫茶にはいくつかの「様式美」がある。厚みのあるコーヒーカップ、砂糖とミルクが最初からセットされてくる提供スタイル、コースター代わりの紙ナプキン、そして常連客との静かな会話——これらすべてが「純喫茶体験」の一部だ。

純喫茶の内装 レトロな喫茶のコーヒーカップ

「老舗の喫茶は、主人が空間をつくっているんです。メニューも値段も変えない、内装も変えない。その一貫した姿勢が、居心地の良さを生む。」

また、「モーニング文化」は純喫茶ならではの文化だ。コーヒー1杯の値段でトーストや茹で卵がついてくるサービスは、名古屋が発祥とされるが、全国各地にそれぞれのスタイルが根付いている。

RECOMMEND

今行きたい、昭和レトロ喫茶

東京には今もなお、創業50年・60年を超える喫茶店が点在している。月島・神保町・浅草・荻窪といったエリアには特に密度が高く、ひとつのエリアをゆっくり歩きながら梯子喫茶を楽しめる。

老舗喫茶のコーヒー

ネルドリップで淹れる深煎りの一杯には、何十年もの時間が凝縮されている

今回ご紹介した「月島アンティーク珈琲」は、創業1978年の純喫茶。内装はそのままに、主人が毎日手挽きのネルドリップでコーヒーを淹れ続けている。喫茶好きなら一度は訪れてほしい一軒だ。

MANNER

老舗喫茶を楽しむための心得

老舗喫茶は「スタバのように」使う場所ではない。長時間のノートPC作業や大声での電話は、空間の雰囲気を壊す。その場の静けさと時間の流れを大切にした「喫茶の作法」を心がけよう。

常連の多い店では、初めて訪れる際に「はじめて来ました」と一言伝えると、主人がその店のこだわりや歴史を教えてくれることも。会話の中にこそ、老舗の味わいがある。